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2012.01.06 Friday | - | 

私の男

評価:
桜庭 一樹
文藝春秋
¥ 1,550
(2007-10-30)

お父さんからは夜の匂いがした。 狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。 優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る―。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。
GOSICKと比べてものすごくねっとりとした話。七竃もそうだったけどなんと言ったらいいのか分からない。章が進むごとにどんどんと過去へ遡っていく作りに引き込まれた。最初の話で読み手はこの話のラストがどうなるか分かってしまう。そして「彼らになにが起こったのか」読み進めるごとに実体がどんどんと浮き上がってくるのだけれど、それが父と娘の歪んだ愛の形だと分かってなんだか泣けてきた。私は女なので小町と同様に娘である花が卑怯に見える。淳悟はこの話の前に何をしでかして、そしてこの後にどうなったんだろう。最後の章の二人が微笑ましくて、一見読後感はいいのだけれど、この二人があの未来に行き着くのかと思うとやるせない…。
2012.10.22 Monday | 小説(さ行の著者) | 

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1

富士の樹海の果ては、異世界に続いてた!?そこはドラゴンが空を飛ぶ、まさにファンタジー世界そのもの!!そんな非常識な状況に放り込まれたのは、単なる高校ドロップアウトの慎一。ラノベ作家の父とエロゲー原画師の母を持つ、サラブレッド級オタクの慎一だったが、だからといって特別な力は何も無い。持っているのは、ただ『萌え』についての知識、見識、勘だけ。それで本物の異世界と交易しろって!?そう、慎一に果せられた任務は『萌え』の伝道だった!というわけで何がなんだか分からないまま、実は中身がちょっと腐ってる女性自衛官に護衛されつつ、ハーフエルフのメイドさんや美幼女皇帝と親交を深めて、なんとなくいい感じになっていくと、今度はテロが―。
面白かった!表紙というか帯で色々損をしている気がする。単純にこういう萌え系なオタクをターゲットにしてるんだとしたら読んだときに表紙詐欺だと思われそうな…。二次元燃え(萌え)文化がないところにアニメ・漫画を持っていったらどうなるか。ものを面白いと思えるかどうかっていうのはそれまで育ってきた文化の下地がやっぱり必要なんだなーと改めてしみじみ。内戦勃発地域に戦争映画持ち込んだってそりゃ流行らないだろうって話ですよね。異世界に漫画を持ち込んでみる→まず日本語が読めない→日本語を教えようとする→異世界の人「日本語以前に字が読めるのは貴族だけです一般人が字なんて読めるわけなんでしょ?」みたいなシーンがあるんだけど(<異世界言語に翻訳してみたらどうだろうってことで)現代の識字率の高さ(特に日本)から字が読めないなんて想像だにしないもんなあ。それにプラスして階級制度ががっちり根付いている・独裁者がいる世界に「人類皆平等!学校作って勉強教えちゃうよー」っていうのは階級制度の上のほうにいる方々には迷惑でしかないわけで。文化の侵略は土地の侵攻よりたちが悪いぜーという割とドロっとした話なのに帯が「萌え」だもんだから表紙詐欺だと最初に書いたのです。文化の侵略っていっちゃえば洗脳だもんなあ。宗教もそうだけど。
2012.01.05 Thursday | 小説(さ行の著者) | 

お嬢様と恋する錬金術師

「お姉様が王子様の花嫁になるべきよ!」そのために必要な王家への貢ぎ物を求め、悪名高い『久遠の森の錬金術師』を頼るチェリル。だが森の奥で出会ったのは彼の孫を名乗る少年だった。恋と魔法のコミカル・ラブ・ファンタジー登場!!
サイドバーにありますバナーのキャンペーンで頂いたもの。せっかくなので感想も。「少しだけ大人な」と謳い文句にあるようにいわゆる性描写を含むハーレクインとまではいかなくともティーンズラブ的な内容なのかな〜と思ってたのですがしごくあっさりしておりました。まあキスはしてるしやることはやってるんですけどベッドシーン、暗転、翌日な感じだったのでこの作品はどちらかというと中学生あたりの子向けかもしれません。イラストもほわほわしてて可愛いですしね。(ウェブ小説としても公開されてます) チェリルもミリアルドもお互い一目ぼれみたいなものなので、恋に落ちて発展する描写もとくになく…(ヒロイン・チェリルがミリアルドに王家への貢物作成を依頼→ミリアルドはチェリルが王子と結婚するためだと勘違いしてふてくされ→ミリアルド好き!)なんか本当に可愛いね〜くっついてよかったね〜と非常にゆるいお話でした。まあ微妙に謎も残ったままなんで評判が良かったら続編が出るんでしょうけど…性描写ありを売りにするならもうちょっと押し出した方がいいんじゃないかな…。まあ大体の想像はついてますけど。
2011.07.15 Friday | 小説(さ行の著者) | 

GOSICKsII―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―

まぶしい日射し、あふれる緑、静寂に満ちた、聖マルグリット学園―極東からの留学生・久城一弥と智恵の泉を持つ少女、ヴィクトリカは初めての夏休みを迎えた。大図書館で、庭園で、芝生で、謎を解き、世界を語る2人の距離は少しずつ近づいてゆく。やがて訪れる大きな嵐の予感すら、この輝きを曇らせはしないのだ―。人気ミステリシリーズの名探偵コンビ、つかの間の安らかな日日を描いた外伝短編集。
2巻を読むつもりだったのを間違えて…短編だけあって軽く読める話ばかり。寮長さんの話はにやりと出来て面白かった。
2011.03.07 Monday | 小説(さ行の著者) | 

私の男

評価:
桜庭 一樹
文藝春秋
¥ 1,550
(2007-10-30)

お父さんからは夜の匂いがした。 狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。
陰鬱とそしてとてもねっとりとした話だった。話が過去に遡っていくにつれ、序盤に投げかけられた謎がどんどんと紐解かれていく。とてもすっきりしていくのと同時に、彼らの未来が一番最初の章で提示されているが故に、行き着く先が見えているのがとても辛い。「もしかしたら」という予想をすれすれのところで乗り越えられる感触は嫌いじゃない。花をずるいと思ってしまうのは私が同じ女だからなんだろうなあ。淳悟のその後が読みたい作品。
2011.02.22 Tuesday | 小説(さ行の著者) |