お父さんからは夜の匂いがした。 狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。 優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る―。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。GOSICKと比べてものすごくねっとりとした話。七竃もそうだったけどなんと言ったらいいのか分からない。章が進むごとにどんどんと過去へ遡っていく作りに引き込まれた。最初の話で読み手はこの話のラストがどうなるか分かってしまう。そして「彼らになにが起こったのか」読み進めるごとに実体がどんどんと浮き上がってくるのだけれど、それが父と娘の歪んだ愛の形だと分かってなんだか泣けてきた。私は女なので小町と同様に娘である花が卑怯に見える。淳悟はこの話の前に何をしでかして、そしてこの後にどうなったんだろう。最後の章の二人が微笑ましくて、一見読後感はいいのだけれど、この二人があの未来に行き着くのかと思うとやるせない…。]]>
富士の樹海の果ては、異世界に続いてた!?そこはドラゴンが空を飛ぶ、まさにファンタジー世界そのもの!!そんな非常識な状況に放り込まれたのは、単なる高校ドロップアウトの慎一。ラノベ作家の父とエロゲー原画師の母を持つ、サラブレッド級オタクの慎一だったが、だからといって特別な力は何も無い。持っているのは、ただ『萌え』についての知識、見識、勘だけ。それで本物の異世界と交易しろって!?そう、慎一に果せられた任務は『萌え』の伝道だった!というわけで何がなんだか分からないまま、実は中身がちょっと腐ってる女性自衛官に護衛されつつ、ハーフエルフのメイドさんや美幼女皇帝と親交を深めて、なんとなくいい感じになっていくと、今度はテロが―。面白かった!表紙というか帯で色々損をしている気がする。単純にこういう萌え系なオタクをターゲットにしてるんだとしたら読んだときに表紙詐欺だと思われそうな…。二次元燃え(萌え)文化がないところにアニメ・漫画を持っていったらどうなるか。ものを面白いと思えるかどうかっていうのはそれまで育ってきた文化の下地がやっぱり必要なんだなーと改めてしみじみ。内戦勃発地域に戦争映画持ち込んだってそりゃ流行らないだろうって話ですよね。異世界に漫画を持ち込んでみる→まず日本語が読めない→日本語を教えようとする→異世界の人「日本語以前に字が読めるのは貴族だけです一般人が字なんて読めるわけなんでしょ?」みたいなシーンがあるんだけど(<異世界言語に翻訳してみたらどうだろうってことで)現代の識字率の高さ(特に日本)から字が読めないなんて想像だにしないもんなあ。それにプラスして階級制度ががっちり根付いている・独裁者がいる世界に「人類皆平等!学校作って勉強教えちゃうよー」っていうのは階級制度の上のほうにいる方々には迷惑でしかないわけで。文化の侵略は土地の侵攻よりたちが悪いぜーという割とドロっとした話なのに帯が「萌え」だもんだから表紙詐欺だと最初に書いたのです。文化の侵略っていっちゃえば洗脳だもんなあ。宗教もそうだけど。]]>
「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。「出てこい、海猫」激情の赴くままに撃墜を重ねる千々石のその背には、天ツ上の国民的歌手・水守美空の歌があった…。空前の大ヒットとなった『とある飛空士の追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻まとめて読もう。そう思って上巻が発売された時に買わずにいました。いざ下巻が発売されても余韻を楽しもうと上巻のみを買ってまだ下巻を購入していません。ええ、現在手元に下巻はないのです。なのに読んでしまった。序章だけで読むのを止めて下巻を購入して一気に読もうと思ったのに手が止まらなかった。 だって海猫が序章から出てくるんだものー! というわけで一気に読みました。シャルルと同じように下層からの成り上がり千々石。嫌いじゃない。嫌いじゃないですこういうキャラ。実際追憶のあとどうなったんだろう?という疑問はありました。恋歌で「彼」が出てきたこともあって、とりあえず空にはいることがわかってほっとしたのは事実ですが、追憶も恋歌も戦いの物語であると同時に恋物語であって、国としての行く末が書かれていたわけではないのでね。すごくすごく下巻が読みたい。けど読みたくない。なぜなら先ほど書いたように恋歌に彼が出てくるということは、この夜想曲以降も彼は生きてるわけです。ずっと引き分けの戦いを続けていければいい。けれどきっとそうはならないでしょう?恋歌のことがあるので、実は今回もああ、こいつらいつ死ぬんだ…とハラハラしながら読みすすめました。225ページの
――おれは、お前の下が戦いやすい。本人に直接言ってやれよ!と思ったりもしたけど、多分これ口にしたら死亡フラグでしょう?下巻は色々覚悟して読みます。タオルの準備してな!]]>
「お姉様が王子様の花嫁になるべきよ!」そのために必要な王家への貢ぎ物を求め、悪名高い『久遠の森の錬金術師』を頼るチェリル。だが森の奥で出会ったのは彼の孫を名乗る少年だった。恋と魔法のコミカル・ラブ・ファンタジー登場!!サイドバーにありますバナーのキャンペーンで頂いたもの。せっかくなので感想も。「少しだけ大人な」と謳い文句にあるようにいわゆる性描写を含むハーレクインとまではいかなくともティーンズラブ的な内容なのかな〜と思ってたのですがしごくあっさりしておりました。まあキスはしてるしやることはやってるんですけどベッドシーン、暗転、翌日な感じだったのでこの作品はどちらかというと中学生あたりの子向けかもしれません。イラストもほわほわしてて可愛いですしね。(ウェブ小説としても公開されてます) チェリルもミリアルドもお互い一目ぼれみたいなものなので、恋に落ちて発展する描写もとくになく…(ヒロイン・チェリルがミリアルドに王家への貢物作成を依頼→ミリアルドはチェリルが王子と結婚するためだと勘違いしてふてくされ→ミリアルド好き!)なんか本当に可愛いね〜くっついてよかったね〜と非常にゆるいお話でした。まあ微妙に謎も残ったままなんで評判が良かったら続編が出るんでしょうけど…性描写ありを売りにするならもうちょっと押し出した方がいいんじゃないかな…。まあ大体の想像はついてますけど。]]>
サマーアの空を覆う神の呪いは砕け散る。天空に広がるは深く抜けるような蒼穹。その中心で輝く黄金の太陽。人々は驚喜した。しかし。夢売りと夜の王の元には、まだ二つの彩輝晶「光輝晶」と「闇輝晶」が残されていた―。綺麗に終わってよかった。だけど話の面白さとしては1>2>3。別人物の視点から同時間軸を書いているせいもあるけれど、同じ話を同じ巻で2度読まされるのは正直苦痛。もうちょっと構成考えてほしかったな。ツェドカとアライスの邂逅が短かったのも残念。この二人にはガッチリと顔を合わせて言葉をもって対話してもらいたかった。ダカールやイズガータ、アーディンがこの後どういう風に過ごしていったのかもすごく気になる。番外編は携帯配信とのことだけど書籍化希望。]]>
伊豆・相模の地を平定した北条早雲の次なる策は、周辺諸国から領地を守る次世代の指導者たちを育てること。風間一族の少年・小太郎は学問の才を見出され、早雲の直弟子として日本最古の大学「足利学校」へ送り込まれた。若き日の山本勘助らと机を並べながら兵法・占術・陰陽道・医術・観天望気・軍陣の作法など、戦国大名のブレーン「軍配者」に必須の学問を修めた小太郎は、やがて戦場で友たちと再会する…。風魔小太郎がまだ風間一族の小太郎という少年だったときのお話。早雲がかっこよかったー。そして山本勘助というキャラクター造形にもびっくり。いわゆる歴史小説なんだけれどそのあたりはファンタジーですごく楽しめました。小太郎がこれまた家族思いですごくいい子なんだな…。]]>
「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」―鉄血宰相・春川司が出した厳しい条件に向け、新メンバーで走り出した『シアターフラッグ』。社会的には駄目な人間の集まりだが、協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。しかし、借金返済のため団結しかけていたメンバーにまさかの亀裂が!それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。どうなる『シアターフラッグ』!?書き下ろし。有川作品なんだからそりゃラブは入りますよ、と言われればそれまでなんだけれど、1巻で焦点だった借金返済が2巻でラブにとって変わると途端にこうもつまらなくなるんだな、というよい見本。この先劇団内でドロドロの愛憎劇まがいな別れまで描いてくれたら面白いだろうけれど、まあないだろうな。]]>
戻りたい──いちばん美しい季節の光の中へ 同じ誕生日、隣同士の家に生まれた美奈子と美耶。互いに「特別」な存在だった。11歳の夏、美耶の「ある能力」がふたりの関係に深い影を落とすまでは・・・。純粋な想いが奇跡をよぶ、「絆」の物語。「ある能力」=怪我を治せる力かと思いきや実は時間を逆行させる力でした。それによってすれ違っていく二人の姿が実に悲しい。 ある日美奈子が指を切ってしまった。美耶がそれに触れ、傷が治ってしまったところから全てが始まってしまう。美耶の父親はそれを奇跡の力だと言い、お金儲けに走り出す。そんな中美奈子の父親が倒れ、美奈子の母親と美奈子は美耶の家に行き父親を助けてくれと懇願するが、美耶の父親は多額のお金を請求。結局間に合わず美奈子の父親は亡くなってしまう。「美耶はお父さんを助けられたはずなのに助けてくれなかった」美奈子は美耶の力がどんなものか分かっていた。なぜなら最初に治してくれた傷も何もしていないにも関わらず、しばらくしたらまた同じように切れてしまったから。それでも父親を助けてほしかったと願った。中学、高校にあがっても美奈子と美耶の関係は続く。友情とは言いたくとも言えない、使う者と使われる者に近い関係。そうして力を使い続ける美耶はどんどんと体力をなくしていく。]]>
評価:
桜庭 一樹 角川書店(角川グループパブリッシング) ¥ 580 (2010-09-25) |
まぶしい日射し、あふれる緑、静寂に満ちた、聖マルグリット学園―極東からの留学生・久城一弥と智恵の泉を持つ少女、ヴィクトリカは初めての夏休みを迎えた。大図書館で、庭園で、芝生で、謎を解き、世界を語る2人の距離は少しずつ近づいてゆく。やがて訪れる大きな嵐の予感すら、この輝きを曇らせはしないのだ―。人気ミステリシリーズの名探偵コンビ、つかの間の安らかな日日を描いた外伝短編集。2巻を読むつもりだったのを間違えて…短編だけあって軽く読める話ばかり。寮長さんの話はにやりと出来て面白かった。]]>
お父さんからは夜の匂いがした。 狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。陰鬱とそしてとてもねっとりとした話だった。話が過去に遡っていくにつれ、序盤に投げかけられた謎がどんどんと紐解かれていく。とてもすっきりしていくのと同時に、彼らの未来が一番最初の章で提示されているが故に、行き着く先が見えているのがとても辛い。「もしかしたら」という予想をすれすれのところで乗り越えられる感触は嫌いじゃない。花をずるいと思ってしまうのは私が同じ女だからなんだろうなあ。淳悟のその後が読みたい作品。]]>
「そこにぼくの音楽があるんです!」家族、初恋、音楽……。心温まる、涙と感動の青春&家族小説! デビュー作『Little DJ――小さな恋の物語』がベストセラーとなった著者の待望の第2弾。そんなにうまいこといくもんか!とケチをつけながらも読後に何らかの楽器をやりたいなーと思っちゃう作品。ただ肝心の音楽の演奏シーンがいまいちだったなー。父親にはもっとどっしり構えて欲しいし、母親の期待は重いし、姉ちゃんはわがままだし…とあると、14歳の開は大人だったなー。]]>
評価:
あさの あつこ 講談社 ¥ 998 (2009-07-25) |
瓦解するNO.6、いよいよクライマックスへ。矯正施設の最上階でついに紫苑は沙布との再会をはたした。だが非情にも、それは永遠の別れを突きつけられるものだった。マザーの破壊を願う沙布…。そして、ネズミの仕掛けた爆弾は建物を炎に包んでいく―。爆発、炎上をはじめた矯正施設から脱出するために、紫苑とネズミは最期の闘いに挑む。もう誰が主人公なのかわからなくなってきた。]]>
評価:
あさの あつこ 講談社 ¥ 998 (2008-10-10) |
変わり果てた沙布との再会、紫苑の慟哭 NO.6の地下を生き延びた紫苑とネズミは、不可能といわれた矯正施設の扉をこじ開け、ついに内部へ進入する。沙布が囚われている部屋で二人が目にしたものは。話が先に進まないなあ]]>
「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」(伊坂幸太郎)。 太宰治の未完にして絶筆となった「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語!ヒロイン・星野、ヒーロー・繭美。異論は受け付ける。繭美の要旨は某MコDXで脳内再生されました。太宰の「グッド・バイ」は私も読んだことありません。読んでいたらまた違った楽しみ方が出来たのかなあ。]]>